月と菓子パン

女ひとり、気どらぬ町で暮らしているー。近所のとうふやの味を比べる。猫みちを探索する。銭湯で人生の先輩たちの会話を楽しむ。田舎から出てきた父と乾杯する。水泳がちょっとうまくなる。二歳のいなこちゃんを抱っこする。ともだちの家でごはんを食べる。何気ない日常こそが愛おしい。みずみずしい感性ときりりとした筆致でエッセイの新時代を切りひらく、石田千の第一作品集。

雪沼とその周辺

小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。

つむじ風食堂の夜

懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さん。食堂に集う人々が織りなす、懐かしくも清々しい物語。クラフト・エヴィング商會の物語作家による長編小説。

停電の夜に

毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦ー「停電の夜に」。観光で訪れたインドで、なぜか夫への内緒事をタクシー運転手に打ち明ける妻ー「病気の通訳」。夫婦、家族など親しい関係の中に存在する亀裂を、みずみずしい感性と端麗な文章で表す9編。ピュリツァー賞など著名な文学賞を総なめにした、インド系新人作家の鮮烈なデビュー短編集。