野蛮な読書(第二章 宇能鴻一郎私論)より

雨が森林に降りそそいで山肌にたっぷり浸みこんだのち、何年も何十年もかけて岩や石のあいだを縫い、土中をくぐり抜け、透明な清水となってふたたび湧き出るような、よけいなものが混じっていない濾過された文章。(中略)むだのない直截(ちょくせつ)さは、だからこそすがすがしい。そして読む者にすべてがゆだねられている。

野蛮な読書より