最果てアーケード

小川洋子の「最果てアーケード」。もう何度も読んでいるから内容は分かっているけれど、あらすじを覚えているのと、改めて文字(ことば)で読み直すのとは違う。新しい発見があろうとなかろうと、そんなことはどうでもいい。久しぶりにあのアーケードに行きたくなった。懐かしい人々に会いたくなった。あの話をまた聞きたくなった。それだけだ。

深いため息が出る。誰もいない、広い草原に大の字になって、空を眺めたくなる。


使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける――。