国語辞典の「らしさ」

国語辞典で「ラジオ」を引いたら、興味深い記載があった。

まず岩波国語辞典には補足的説明として「昭和前期まではラヂオと書いた」とある。ラヂオ・・・。まるで当時のノイジーな音質がそのまま伝わってくるようではないか。過去の表記として埋もれてしまうにはあまりにももったいない。「ヂ」を当てた方がふさわしい場面はこれからも必ずある。「ラヂオ」を手放してはいけない。

新明解国語辞典の「最近の━はおもしろくない」という用例は、「おもしろくない」がおもしろい。あえて否定的なのはそれが編者の本心だからのように感じられ、「おお、やはりあなたもそう思いますか」と握手を求めたくなる。

もちろんこれらの解釈は僕が勝手にしたものに過ぎないのだが、それぞれの国語辞典が持つ「らしさ」を感じられる好例だったことは確かだ。国語辞典にはまだまだ知らないことが載っている。ことばの意味だけじゃない。各国語辞典に、それぞれの「らしさ」が隠れている。

*岩波国語辞典の補足的説明は第八版(記事執筆時の最新版)、新明解国語辞典の用例は第七版(記事執筆時の最新版は第八版)より引用しています